職人の手から手へ、
心を括り染めていく京鹿の子絞。

絞り染めは、日本では千数百年も前から行われており、衣装の紋様表現として用いられてきました。括(くく)りの模様が子鹿の斑点に似ているところから「鹿の子絞り」と言われます。

平安初期の歌人、在原業平の読んだ百人一首収載の 「ちはやぶる神代も聞かず竜田川韓紅にみずくくるとは」は 水面に映える真っ赤に紅葉した落葉の美しさを、あの素晴しい絞り染めのようだと詠ったものです。

室町時代から江戸時代初期にかけて、辻が花染として盛んに行われるようになり、江戸時代中期には、鹿の子絞りの全盛期を迎えました。

江戸時代の度重なる奢侈禁止令により、贅沢品として歴史の表舞台からは、姿を消した時期もございますが、手先の技はその後も着実に受け継がれて来ています。